政策集団が陥りやすい特殊な精神状態と行動については、前回までで大まかな内容を書き終わりました。
実は、もともとはもっと長文だったのですが、話を複雑化させないために大幅に文章を削りました。
ただ、余裕がある方のために、その削除した部分から保守活動の参考になるであろう部分を記録しておこうと思います。
補足的な内容ではありますが、これを知ることは保守にとって必ず利益になるはずです。
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『集団成極化(リスキーシフト)』という現象があります。
有名な概念ですので、知っている方も多いのではないかと思います。
(ただ、この概念を知っている方であっても一読していただけたらと思います・・)
どのような現象なのか? 集団行動の心理学より引用してみます。
これまでの研究では、集団内の相互の影響過程により集団の意思はメンバーの意見の平均的意見に収斂されていくと考えられてきました。 ところが集団による意思決定は、メンバーの総意により極端になることがあり、この現象をリスキー・シフト現象とよびました。 一般的に、意思決定では何らかのリスクを伴い、集団の判断は個人の判断と比べ、確率が低く(リスクを伴う)、危険度の高い判断をする傾向にあるというものです。 この現象の検証は、ワラックとコーガン(1962)が開発した実験パラダイムである選択ジレンマ問題(CDQ)を用いることで急速に進展しました。 これは、リスクの伴った事例を提示し、リスクは高いが成功のあかつきには報酬がよい選択肢(高リスキー)からリスクは少なく報酬も低い選択肢(低リスキー)との間で、友人への助言として判断を求めるという方法で行われます。 選択は、まず個人事態で決定し、次に集団事態で決定し、さらに個人事態で判断します。 その結果、集団事態では先の個人事態に比べ、よりリスキーになり、さらに個人事態に戻ってもリスクの高い方向に判断が移行しました。 |
これは要するに『集団には高リスクな意思決定を行うという抗えない習性がある』ということ、また、その成員は『集団を離れたとしても高リスクな意思決定を維持する』ということを述べています。
『相互確証幻想』に取り憑かれると「精神が異常になり馬鹿げた意思決定」を行うわけでしたが、これは「高リスクな意思決定」を行います。
保守活動に長く触れている方であれば『リスクを取らなければ成果は得られない』という主張を見たことがある方が多いのではないでしょうか?
私は何度もあります。
この場合のリスクとは「過激化・非倫理化」を指しています。
前述しましたが、これは社会変革運動を崩壊させ敗北にいたらしめる主要因の一つです。
社会運動学において社会変革運動解体の要因というのは、ある程度、公式化されています。
社会変革運動の崩壊は、「政府の規制」「共鳴者の離散」「反対者の抑圧」「運動体の内部対立」「担い手再生産の失敗」「メディアのフレームアップ」「ブームの終焉」などの変数により決定されますが、これらの要因に過激化・非倫理化が深く関与しています。
ようするに『集団成極化』がすすむと社会変革運動は敗北します。
とくに近代民主主義国家においてはこの傾向が強く、社会運動研究の第一人者Sidney G. Tarrow博士(コーネル大学社会学部教授)は、著書において、近代民主主義国家における社会変革運動において非倫理的な戦術を用いて勝利することは不可能であり、非倫理的な戦術が採用・発展した例も無い、と述べています。
このような社会変革運動を必敗に追い込む『集団成極化』という抗えない習性が人間にはある、ということだけでも興味深いものですが、さらに注目すべきは、それが発生するメカニズムです。
これがまた非常に示唆に富んでおり、保守活動家は知っていた方がよいと思われます。
これを知ることは必ず利益になるはずです。
明日以降、このメカニズムについて考察していきたいと思います。
明日に続きます。
もしよろしければ・・―→